FUKUSHIMA50『The memory 1F lost all power supplies』5-2

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     全電源喪失の記憶(証言 福島第1原発)   

    第5章 「命」

    〈2〉「サプチャン圧力ゼロ」 所長、避難を即決

    大分合同新聞 2014.8.13夕刊掲載

    後ろから撃たれた

     「何言ってんだ、こいつ!」「なんだよこれ。ひでえな」。3月15日早朝、福島第1原発免震重要棟の緊急時対策本部にいた全員が、テレビ会議のモニター画面にくぎ付けになった。東京電力本店を訪れた首相の菅直人(64)が「逃げてみたって逃げ切れないぞ」と大声で怒鳴っていた。

     対策本部内の数百人が無言で画面を見つめていた。「こっちでは一生懸命頑張っているのに、後ろから機関銃で撃たれた気分でした」。第一復旧班長の稲垣武之(47)はそう振り返る。

     管が演説を終え本店の小会議室に移動した。小会議室にもテレビ会議のモニターが置かれ、第1原発と相互に連絡ができるようになった。

     「1F(第一原発)、聞こえますか?」

     本店からの呼び掛けに、所長の吉田昌郎(56)が手を挙げて応えた直後…。

     ズンッ!

     午前6時14分ごろ、免震棟に衝撃が伝わった。1、3号機の爆発時より小さな衝撃だったが、明らかに地震とは違う。

     1、2号機中央制御室から対策本部に連絡が入った。

     「2号機サプチャン圧力がゼロになりました」

     格納容器の一部で、原子炉建屋地下にある圧力抑制室(サプレッションチャンバー)の圧力が突然、なくなったという。

     全員が凍り付いた。圧力容器からの蒸気を冷やす圧力抑制室の気密性がなくなり、高濃度の放射性物質を含んだ蒸気が環境に大量放出される。もう第1原発構内どころか、周辺地域にすら安全な場所はなくなる。最も恐れていた事態だった。

     稲垣が吉田に進言した。

     「サプチャンに大穴が開いたと思います。とんでもない量の放射性物質がでてきますよ」

     「退避させるぞ」

     吉田は即決した。テレビ会議のマイクのスイッチを入れ、本店に退避を申し出た。必要のない大勢の社員たちをいつ退避させるか吉田はずっとタイミングを計ってきたのだ。今がその時だった。

    本店の反応に激怒

     ところが約220キロ離れた東京の本店の反応は鈍かった。制御室にある圧力計が故障したのではないか、と言う。吉田がキレた。

     「そんなこと言ったって、線量が上がってきて、こんな状態で全員いたらおかしいだろっ!」

     吉田はおもむろに白いヘルメットをかぶった。もう何が起きても不思議ではない、現場はそれほど危機的な状態なのだ、とアピールしていた。

     吉田は1〜6号機の三つの制御室にいた全運転員に、免震棟へ避難するよう命じた。

     吉田は2号機に異常があったと信じて疑わなかった。だが免震棟に伝わった衝撃音は、4号機原子炉建屋からのものだった。それが分かるのは午前7時前のことだった。(敬称略。年齢、肩書は当時。共同通信 高橋秀樹)










     

        


    FUKUSHIMA50『The memory 1F lost all power supplies』5-1

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       電源喪失の記憶(証言 福島第1原発)

      第5章 「命」

      〈1〉首相「逃げ切れんぞ」  本店へと乗り込む

      大分合同新聞 2014.8.12夕刊掲載

       万策は尽きたー。3月15日、福島第一原発では2号機格納容器で圧力が上昇し、破損して大量の放射性物質が放出される恐れが高まっていた。なすすべのない東京電力に憤る首相。首都圏をも巻き込んだ東日本の広域が汚染される史上最悪の事態は避けられるのか。「退避せよ」。所長の命令が下る。事故発生から5日目。免震重要棟は運命の朝を迎えた。

      「日本国の滅亡だ」

       「撤退したら東電は100パーセントつぶれる。逃げてみたって逃げ切れないぞ!」。3月15日午前5時35分すぎ、東京・内幸町の東京電力本店の緊急時対策室に首相の菅直人(64)の怒号が響いていた。

       「プラントを放棄したらどういうことになるか知っているはずだ」。目の前に、こわばった表情の東電会長勝俣恒久(70)ら経営陣がいた。

       政府と東電が一体で事故収束に当たる統合対策本部を設置するー。首相官邸のエントランスで管は記者団にそう告げて東電本店へと乗り込んだ。民間企業の本社に首相が赴き、対策本部を立ち上げる。異例の対応だった。

       管を乗せた専用車はカメラのフラッシュの中を地下駐車場に入った。2階の対策室では経済産業相の海江田万里(62)らが既に待機していた。統合本部事務局長を命じられた首相補佐官の細野豪志(39)が「総理から一言あいさつを」と紹介し、管は話し始めた。

       その様子はテレビ会議システムで福島第1原発にも中継されていた。

       「このままでは日本国滅亡だ。撤退などあり得ない。命懸けでやれ」

       「60(歳)になる幹部連中は現地に行って死んだっていいんだ。俺も行く。社長、会長も覚悟を決めてやれ!」

       社長の清水正孝(66)を午前4時すぎに官邸へ呼び、第1原発からの撤退はあり得ないと宣告した管だったが、拭い切れない東電への不信感がここで爆発した。勝俣や清水を指さし、時折両手を大きく広げ、部屋にいた約200人の社員に大声でまくし立てた。

       「撤退したら東電は100パーセントつぶれる」。管はもう一度言った。

       「大事なことは5、6人で決めるものだ。ふざけるんじゃない」と最後に言い放つと、打ち合わせの小部屋を用意するよう求めた。演説は10分以上に及んだ。

      テレビ会議の存在

       菅の激しい言葉に免震重要棟の社員たちも足を止め、テレビ会議の画面に見入っていた。

       管はこの時の言動を振り返り「怒鳴り散らしたなんて意識は全くない」と説明する。

       「本当に大変な状況だから、何としてもギリギリ頑張ってくれという思いを強い言葉で言ったかもしれないけど、彼らを怒るって感覚はないんだよ、俺には」

       一方、事故対応に当たった政治家の多くは、テレビ会議の存在をこの時初めて、知った。1号機の爆発をテレビのニュースで知らされるなど情報伝達の遅れにいら立っていた管には驚きだった。

       「本当にびっくりした。でかいスクリーンがあって、第1原発とつながっているじゃない。『なんだこれ』っていうか、これがあるのになんであんなに官邸に情報が伝わるのが遅いんだと…」

       政府と東電の意思疎通改善を目指した統合本部設置。だが危機を救うには遅すぎたと管は直後に思い知らされる。(敬称略。年齢、肩書は当時。共同通信 太田久史)
       =第5章(最終章)、18回続き=





        


      はじめに

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        東日本大震災から3年半が過ぎました。

        原発事故からも同じだけの年月が流れました。大丈夫、乗り越えられる、と食い入るように福島第一原発が映る画面を見つめていたあの時に、その向こうでは一体何があったのか。

        「全電源喪失の記憶」は、共同通信が現場取材を重ねて当時の詳しい状況を記事にしたもので、福島民報や福島民友新聞を始めとする地方新聞に3月に掲載されてから最終章となる5章までまとめられていき、8月をもって終了された長期の連載記事です。時期を前後しながらおよそ30社が掲載していきました。

        この最終章を切り抜いてちょっとした本仕立てにしようと新聞紙をひっくり返してはノートに貼って行ったのですが、最初のいくつかの掲載分が抜けてしまいました。

        それならとネットで検索してみましたら、安全神話が崩れた、だから再稼働はなるものか、という極端な脱原発推進と一緒に取り上げるブログばかりが目につきます。
         

        神話は今は無いのなら、きっと当事者の方々は歩みを止めずに進んでほしいと願っているはずです。

        そんな視点で取り上げるブログが読みたくてこのブログを立ち上げました。

        _____________________________________

        以下の記事や写真、資料を転載させて頂きました。
        深く感謝致します。

        全電源喪失の記憶《証言 福島第一原発》

        第5章 「命」

        〈全ての写真及び資料〉

        転載元:現在の安全と未来の環境を守るために(臼杵竹宵)

            大分合同新聞掲載分

        〈1〉〜〈4〉及び〈7〉

        転載元:大分合同新聞

        〈上記以外〉

        転載元:南日本新聞



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