今ふたたび陰翳礼讃(転載)

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    深港さんの朝の文箱の転載、2回目です。まだまだ続いて欲しい。

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     鹿児島の冬がこれまでになく明るい。クリスマスの定番だったはずのイルミネーションの多くが、年を越した。全国的な傾向である。厳かな神社とは対照的な華やかな場が、初詣先として加わった。イルミネーションは現代の冬の風物詩だ。

     最近は白と青がはやりだ。冬に寒色が好まれるのは、背景に快適さがあるからだろう。もはや冬のくらしが寒さを忍ぶものではないことが透けてみえる。

     明かりは空間を照らし、脇役として長く人のくらしを支えてきた。一方、イルミネーションは明かりが主役だ。以前はテーマパークなどの日常と切り離された場所に限られた。それが発光ダイオード(LED)の普及とともに急速に街に拡散した。

     24時間化した日常の中、夜は昼のように煌々と明るい。繁華街には人目を引くための我の強い明かりがひしめく。コンビニでは影すら出ない。暗闇は危険とばかり隅々まで照らされる。

     明るさに満ちた日本は、果たして心地よいのだろうか、照明デザイナーの面出薫氏は、太陽が最大の師だと語っている。光と闇と人との深遠な関係をデザインするのが仕事だという。

     夜の帳(とばり)が下りれば闇に覆われる。本来、夜は暗い。そして静かだ。その摂理を、私たちは忘れがちだ。

     鹿児島市・高麗本通りのクスノキの並木が好きだ。空を覆うがごとく力強く、新緑はまばゆい。昨年、その一角が消えた。交通渋滞を緩和する善処策である。後には驚くほど大きな空間が現れた。再び植樹していくそうだが、目かくしを剥がされた街は無秩序の固まりに思えた。

     市街地からすべての街路樹が消えたら、思いもよらぬ雑然とした広がりが出現するだろう。夜ともなれば、なおさらである。

     つくづく眺めると木々はあらゆる光を吸収して漆黒である。その闇が街をまろやかに包む。

     日本人は長い間、陰影に満ちたくらしをしてきた。谷崎潤一郎が急激な西洋化のジレンマの中、その姿を随筆「陰翳礼讃」に描いた。本来、文化に寄り添い発展すべき文明の利器が、日本では「西洋は利、東洋は愚」とでもいうように流入した。だが陰影を離れて美はなく、ほの暗さが何者の装飾にも優れると言う。

     目新しい利器に文化を沿わせた過去の上に、私たちの今のくらしがある。明るさはその象徴だ。昭和初期の東京や大阪の夜は、西洋の都市より明るかったという。戦後には、豊かさの指標のように明かりが街にあふれた。そして、陰影は消えた。

     宇宙から地球をみると、日本は世界で一番明るいという。テレビのCMに、都会の夜空に地球がもう一つ浮いている画像が映る。このままのくらしを続けると、2030年には地球二つ分の資源が必要になる。

     衝撃的なメッセージだ。 

     そろそろ1位の座を返上してもいい。陰影のあるくらしを楽しむ価値観に立ち戻ってみるのもいい。私たちのふるまいが問われている。

     谷崎は記している。「まあどう云う工合になるか、試しに電気を消してみることだ」

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    深港 恭子(ふかみなと きょうこ)氏

    指宿白水館薩摩伝承館学芸員。1969年垂水市生まれ。西南学院大学文学部卒。鹿児島県歴史資料センター黎明館資料調査編集員などを経て、2008年から現職。指宿市在住。

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    南日本新聞朝刊 2月8日掲載分

    帰り道、街灯の明かりがついているとほっとします。同時に、月を見上げ星を数える日もあります。

    自由に闇を感じようと思えば選べる生活を送る私たちは恵まれているのかもしれません。

    これだったら始められるというエコは心がけています。そう言いながらも、皿洗いの時についつい温水でじゃぶじゃぶ洗っていたら、ガス代がえらいことになっていました。反省。

    夕暮れ時、夕日の名残色の桜島が、薄墨の景色の中でたたずんでいました。

    春が来れば、薄霞の日も多くなるでしょう。今日は北風が何もかも吹き飛ばし、くっきりとした山肌を見せていました。

    春はもうすぐです。


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